CAAKレクチャーシリーズ26回 長谷川豪「最近の仕事について」

| コメント(0) | トラックバック(0)

みなさま、いつもお世話になっております。

前日の野老(ところ)さんのレクチャーも盛り上がり、勢いのままに二夜連続のレクチャーへ。

 

二日目は、建築家の長谷川豪さんをお招きしました。

長谷川さんは、身の回りの風景を独自の視点で捉え設計されており、最近のお仕事を通じて環境から建物を立ち上げる考え方や手法などをお聞きしました。

caak26_1.JPG


最近のお仕事としては、独立のきっかけとなった『森のなかの住宅』をはじめ、『桜台の住宅』、『五反田の住宅』、今年2月に竣工した『狛江の住宅』、来年2月竣工予定の『練馬アパートメント』などがあります。

 

・誰のものでもない空間(=誰かのモノになりきれない空間)

・ただ空間があるだけでなく、空間そのものが働きはじめるような空間の存在感

 

に可能性を感じていらっしゃって、建築をつくるのにいかされているようです。

 

森のなかの住宅では、南側が河川、北側が敷地から4mも高い遊歩道であり、見下ろされるのを施主さんが嫌がったそうです。

ですが、せっかく解放感のある森の中なのに、北側を閉じて閉鎖的にするのはもったいないですよね。

そこで、大きな切妻屋根の中に、7つの小さな小屋を並べ、大きな屋根と小さな屋根に誰のモノでない空間をつくったそうです。

この空間は、光や森の風景が取り込まれ、南側の光が反射され北側の屋根を明るくさせる働きを持っているようです。

平面図式にとらわれない発想をすることで、内外の空間だけでなく各方角の特徴をも結び付け、新たな環境へと広がっていますね。

 

 

桜台の住宅は、住宅の真ん中に中庭のような2層吹き抜け部屋がつくられ、外側に家庭菜園などをする普通の庭を設けそれらの間で生活をするような住宅のようです。

部屋いっぱいに家族共有のテーブルが設置され、テーブル下に束を立てることによって中庭としての機能も持ち合わせています。

80cm角の窓で各部屋とつながり、窓から少し離れることで死角になり個人の空間が確保されるが、中庭の空間から気配を感じ、数歩窓に近づけば家族と直接つながることもできる空間となっているとのこと。

誰のものでもない空間をつくることで、ドアの開閉による雑な関係の変化よりも、気分に応じて柔らに家族の関係を調整できる、良い手法だと思いました。

 

五反田の住宅は、敷地内に建物を2棟つくり、その間にらせん階段を設けスキップフロアや廊下の役割を持ち2棟をつなげています。

らせん階段は、長谷川さんが現地調査の時にただの雑居ビルより、屋外階段のついた雑居ビルの方がまちとの結びつきが強いと考えているようで何かに使えないかと思ったそうです。

部屋を移動する時に、らせん階段の窓からまちの景色を見せることで、必ずまちを体験させています。

これによって、まちに対してそれぞれ独立した食事やトイレ、お風呂のためのスペースが存在しているようであり、家で過ごすというよりも街中で過ごしているような空間となっているそうです。

 

狛江の住宅は、周辺が閑静な住宅街であり、パビリオンのように軽快に建てることでまちを明るくできるのではと考え、つくられたそうです。

敷地が第一種低層住居地域角地の敷地であり、建蔽率の対策として半地下を設けています。

リビングやダイニングなど客人も使う部屋を平屋一階部分に、子供部屋や寝室などプリベート空間を半地下部分に配置され、半地下の上にはリビングの床から1m高い庭を設け天窓から採光を取るようになっています。

地下に棲むことは、土に囲まれ、空を見上げて生活を動物の巣穴のようであり、外からの視線を気にせずに静かで快適に過ごせそうですね。

 

練馬のアパートは、それぞれの部屋をプランニングするよりも庭のバルコニーの形やプロポーションを変えることで各個性を作っていけるかを考えて設計されたそうです。

長谷川さんは、一般的な集合住宅によく見られる、玄関に水場を集め、同じ方向と場所にバルコニーを設け、同じ時間場所に出て洗濯物を干すといった均一的な部分をすごく退屈で気持ち悪い状態と受け止め、

 

・3層吹き抜けの坪庭があるメゾネット型テラス

・一列に細長い庭をつくり部屋を並べる

・角部屋ならL字型につくり庭側に水際をつくる

 

この3つの形式の個性的な庭をつなぐことで、空間に個性を出すようになさっています。

これら空間を歩くことで、まちを歩くことと一緒で通り沿いの庭を眺めたりすることと同じ様に感じればとおっしゃっていました。練馬のアパートの竣工が楽しみですね。

 

 

レクチャー後は、いつものようにパーティーです。

caak26_2.JPG


そうめんチャンプル~など夏っぽい料理が中心でおいしかったです。

今回は、今年4月に関東の大学に編入した、多田君が半年ぶりに寺町町屋に帰宅。

向こうでも、頑張っている様子でした。

僕らも負けていられません!

 

 

新しい環境をつくり、建築とまちを結びつき生み出す...

誰のものでもない空間が秘める可能性はまだまだありそうでワクワクしました。

今後の長谷川さんのご活躍も目が離せません。

長谷川さん、ありがとうございました。

 

今月発売の新建築住宅特集9月号に『狛江の住宅』が掲載されています。

CAAKメンバーの吉村さんが設計された、『N-CUBE』も掲載されているので、要チェック!!です。


それでは、みなさま楽しい夏を~

次回のレクチャーをお楽しみに。

(YW)

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://caak.info/blogpost/mt-tb.cgi/259

コメントする

アーカイブ